税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 都市近郊の農家や地主が不動産経営を行うようになった背景に、都市近郊のベッドタウン化があります。

 ベッドタウンとは、「都市部に通勤する人々が寝るために帰ってくる街」という意味です。

 そこで、都市近郊の土地や農地の価値が、ベッドタウン化によって、どのように変貌していったのかを、私が活動拠点としている東村山市を例にして、具体的に説明していきましょう。

 同様のベッドタウン化現象は、関東大都市圏(首都圏)、名古屋大都市圏、京阪神大都市圏や札幌都市圏、広島都市圏といった、主要都市の近郊でも見受けられます。相続の悩みを抱えている地主の方々にとって、一つの参考になるでしょう。

 私が現在、事務所を構えている東京都東村山市は、新宿まで電車で30分の場所にあり、まさに典型的ベッドタウンといえます。

 東村山市といえば、現在、40代、50代ぐらいの方であれば、おそらくすぐに思い浮かぶのは、タレントの志村けんさんが歌ったことで一世を風靡した「東村山音頭」でしょうか。

 もともとこの曲は、1964年の同市の市制施行を記念して、その前年に東村山町農業協同組合が作成し、レコード販売したものでした。それに、同市出身だった志村さんが、1976年にアレンジをしてカバーしたものが大ヒットし、全国的にも知られるようになったわけです。

 その歌詞の中には、「百合の花さえ 来い来い呼んで ソレヤレソレ 恋のむさしの 狭山の丘は木の間がくれに ちょいとかくす ちょいとかくす」という一節があります。

 この狭山の丘とは、先頃引退発表をして話題になった宮﨑駿監督の国民的人気アニメ「となりのトトロ」の舞台のモデルとなったといわれる狭山丘陵のことです(地元では「トトロの森」と呼ばれています)。

 同市は、この狭山丘陵を背に、荒川から多摩川にかけて広がる武蔵野台地のほぼ中央部に位置します。

 その平たんは地形を生かして、市内では長年、畑作を中心とした農業が行われてきました。とりわけ、サツマイモは特産物として有名で、野菜の他には、果樹や花か卉きの栽培も盛んです。

 農家数は2009年の時点で311戸、そのうち専業農家は6戸、農業を主とする兼業農家は44戸、兼業を主とする兼業農家は261戸です。

 また、経営耕地面積は、2009年の時点で122ha、田が0.5ha、畑が87ha、果樹園地が35haとなっています。

 かつてのように主要な産業ではなくなりつつありますが、市当局は、現在も、積極的な農業振興策を展開しています。

東村山市の経営耕地面積の推移

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