税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
「相続」という言葉を聞いて、心がどこかざわつくような、落ち着かないような気持ちになる人は少なくないようです。

 特に、「地主」の方々にとっては、相続は非常に深刻な悩みではないでしょうか。

 なぜなら、土地を多く持っていれば、それに比例して多額の相続税が重くのしかかってくるおそれがあるからです。

 日本経済新聞が2012年8月に公表したアンケート調査によると、自分や家族・親族の相続について「不安がある」との回答を寄せた人の割合は、全体の35%に達していました。その主な理由として多かったのは、「相続税の支払い」と「相続の配分を巡って争いが起きそうな気がする」の項目で、ともに40%を超えています。

 いずれの理由も、その当事者になってしまった場合、頭を悩まさずにはいられない非常に深刻な問題です。

 まず、相続税の支払いについては、日本は世界的にみても、相続税率がとりわけ高いことで知られています。そのために、「相続が三代続けば、家がつぶれる」などという言葉さえもあるほどです。

 また、相続の配分を巡る問題では、「争続」と呼ばれるような血を分けた家族・親族同士のいさかいが高い確率で発生することもあげられます。その結果、兄弟姉妹が憎しみ合い、肉親の絆が失われてしまうことも珍しくありません。

 「争続」が起きれば、相続分を主張してくる兄弟姉妹等に要求された通りの資産を渡すために、やはり本家の土地の多くを処分しなければならなくなるでしょう。

 現在、私が所長を務めている会計事務所は、周囲には畑や果樹園が広がる東京多摩地区にあります。そうしたこともあり、相続に関する悩みを抱えている地主の方々を、長年にわたってサポートしてきました。

 マンション、アパート経営を行っている方の場合は、経営さえ行っていれば必ず入居者がある、という時代は終わり、しかも家賃の相場も低下傾向にあります。そこに人口現象が追い打ちをかけ、賃貸需要はますます低下していくことが予想されます。採算の取れないマンション、アパートを所有する方の中には、生前に対策を取らなかったばかりにいざ相続をするときになって苦労する人も少なくありません。

 また、都市農家の方の場合は、家長を中心に何世代にもわたって農業を営み、「家」を守り続けてきた伝統と誇りがあります。当然、土地への思い入れは、並々ならないものがあり、そう簡単には手放すことができないものです。しかし、相続税があまりにも工学であれば、納税資金を工面するために、受け継いできた土地の多くを売らなければならなくなるかもしれません。

 近時の税制改正により、平成27年から、相続税の基礎控除の引き下げなどが予定されています。相続税の負担がさらに重くなることが予想される中、相続対策の必要性は、今後ますます大きくなっていくはずです。

 先祖代々受け継いできた大切な土地を、「家」を、そして家族の絆を確実に守るために、ぜひ、本書をご活用ください。

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