税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 そもそも、相続税案件だけをスポットで請け負うことを方針としているような会計事務書と依頼人との関係はあくまでも、その1回限りです。ですので、「案件を処理した後で、依頼人がどうなろうが知ったことではない」というような仕事の仕方になるのもやむをえないのかもしれません。

 しかし、地元で長年、地に足のついた活動をしてきたローカルな会計事務所は、依頼人に対して、こうしたその場限りの、後先考えないような対応をするわけにはいきません。

 もしそんな対応をしてしまったら、「○○さんが、あそこの事務所に依頼したが、あまり真面目に仕事をしてくれなかったようだ」などとすぐさま地域に悪評が広がっていくはずです。

 ローカルな会計事務所にとっては、地元での信用が第一です。たとえ一度でも悪い評価を受けてしまえば、それまで必死に頑張って築いてきた信用が失われ、事務所の存続にすら影響してしまうかもしれないのです。

 そのため、たとえ1回限りの依頼であっても、常に全力で取り組むはずです。また地元の事務所であり、その地域の空気や特殊事情等を普段から把握していることから、たとえば依頼人が農家ならその地域の農家において配慮すべき典型的な事情などについても十分考慮に入れたうえで、万全の対策をとることが可能となります。

 さらに言えば、スポットだけで対応する会計事務所では、税務調査の場合などに、税務署の対応が変わってくる可能性もあります。

 税務署の署員も、仕事上、地元の会計事務所の税理士の顔はよく知っており、お互い気心が知れているようなところがあります。

 そのような関係を背景として、税務署の側には、「あの事務所のクライアントなら、しっかりと申告しているはずだ」という信頼感や安心感が存在するのも事実です。

 それなのに、都心からやってきたよく知らない会計事務所のスタッフが税務調査などに対応したりなどすれば、「地元の税理士に頼まないということは、何か策を弄して相続税をごまかそうとしているのではないか」などと、税務署が警戒心を強める可能性があります。

 このような税務調査上のリスクなども念頭におけば、やはりできるだけ地元の税理士事務所の中から相続税に強い税理士を見つけるのが望ましいといえます。

 また、付随的なメリットとして、地元に密着して活動をしている税理士に依頼した場合、不動産の有効活用についても、助言を受けられる可能性があります。

 一口に「不動産の有効活用」と言っても、様々な形が考えられます。マンション、アパートのような住宅系の他にも、コンビニエンスストアやファミリーレストランなどの商業系、さらには最近では有料老人ホームやグループホーム等の介護系も有力な選択肢の一つとなっています。

 そのどれを選ぶのかは、立地やオーナーの求める投資利回り等によって変わってきます。

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