税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 ことにスポット的な依頼の場合にありがちなことですが、相続が発生した後になって、相続税対策を依頼してくる人がいます。

 しかし、具体的な相続対策のほとんどは、第3章でも説明したように、事前にできるものが中心であり、事後にできることは土地の評価額を下げる程度に限られます。

 そうしたことを考えると、やはり相続が始まる前に、ご相談いただく方が、ベストの対策プランを組めることは否めません。

 しかも、対策を始めるのは早ければ早いほどよいでしょう。万が一、家長が認知症などを患い成年被後見人としての扱いを受けることになってしまったら、とりうる対策の選択肢が非常に限られることになります。

 たとえば、家長が成年被後見人でありその子どもが後見人となっている場合、相続対策として、不動産の有効活用を図ろうとするならば、さらに成年後見監督人が指名されることになります。

 成年後見監督人には、家族以外の第三者、具体的には司法書士や弁護士等の専門家がつくのが一般的です。

 そして、子どもが、父親の不動産について有効活用を進めるうえで必要となる、不動産業者との契約などもろもろの法律行為をするためには、成年後見監督人の同意が必要とされています。子どもが、親の財産を不当に浪費したり、その財産価値を毀損したりするのを防ぐためです。

 この成年後見監督人からの同意を得ることが、実は、非常に厄介なのです。

 成年後見監督人は、基本的に、成年被後見人の資産の現状が大きく変わることに対して消極的です。

 たとえば、息子が、父親の所有する遊休土地に、父親名義で銀行から借り入れをして、収益物件を建てることを計画したとします。

 しかし、父親がすでに別にアパートを持っているような場合には、「現状で安定した賃料収入が得られているのですから、今のままでいいじゃないですか。何も、銀行からお金を借りてまで、これ以上、収益をあげようとしなくてもいいでしょう」などと言って、同意してくれない可能性が高いでしょう。

 そもそも、相続対策をしたからといって、成年被後見人自身にとっては何の利益にもなりません。

 成年被後見人を保護すべき立場にある成年後見監督人からすれば、そんな意味のないことのために、成年被後見人の財産を使ったり、あるいは借金を負わせるようなことを、「なぜ認めなければならないのだ」となるのも無理はないでしょう。

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