税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 相続争いが激しくなり、その解決の道がみえなくなると、納税猶予やその他の税制上の優遇借置をとるうえでも悪影響がでてきます。

 まず、農地等の納税猶予を受けるためには、相続税の申告期間内に遺産分割を終えておくことが前提条件となります。

 したがって、「争続」のために、相続から10ヵ月がたっても遺産分割を終えることができなければ、納税猶予の適用を受けることはできなくなります。

 その場合、本来払うべき相続税を払うことを余儀なくされるため、農業を続けていくことがもはや困難となります。

 また、小規模宅地等の特例も受けられなくなるおそれがあります。この制度の適用を受けるためには、やはり遺産分割を終えていることが前提となるからです。

 ただし、納税猶予と異なり、この特例は、10ヵ月間の申告期間が過ぎた後でも、遺産分割協議がまとまれば適用を受けることが可能です。

 そこで、とりあえずは、特例の適用を受ける前の高い税額で支払っておき、のちのち遺産分割がまとまった段階で払い戻しを受けるという選択肢も考えられます。

 もっとも、遺産分割は原則として申告期限が過ぎてから、3年以内に終えなければなりません。もし3年がすぎても遺産分割協議がまとまらなければ、特別な事情がない限り、もはや小規模宅地等の特例の適用を受けることはできなくなるのです。

「争続」のために分割できなかったような場合には、特別な事情があるとは認められないでしょう。その結果、その恩恵を受けることができなくなるかもしれません。

次のページ : 農家を一生懸命やっていればもめごとは起きない
前のページ : 相続争いの末に心労に倒れる者も
地主のための相続対策 もくじ
土田会計事務所の資産防衛サポート