税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 こうした、家族・親族間の相続争いは、ほとんどの場合、金銭的な問題にとどまらず、感情的な問題へとエスカレートしていきます。

 本家を離れていった人の中には、資産家のもとへ嫁いでいったような人もいます。

 そのような人が、相続の話し合いの当初は、「私はいらないわよ」などと言っていたのに、最後には、しっかりと、数千万円の遺留分をもらっていったようなケースもありました。

 といっても、その人はお金がほしかったのではないのです。

 相続について話し合う中で、長兄と対立し、「許せない」という思いが生まれた——その恨み、「みすみす全部渡してなるものか」という意地がそうさせたのです。

 いったん感情的な対立が生じれば、相続争いはもはや泥沼化することは避けられません。

 相続対策をサポートする立場としては、どうにか対立を解消し、うまくまとめてあげたいと思うのですが、たとえば、先にあげたように冒頭から3億円をいきなり要求してくるようなケースでは、そのようなことは、はなから無理であると思わずにいられません。

 本家を継いだ者は、家を守ろうという自分の思いをないがしろにされ、勝手な主張をしてくる兄弟姉妹に対して怒り心頭となり、最後には、「家の敷居を二度とまたがせない!」と怒鳴りつける。

 つらい光景ですが、相続税を払い終えたときには、ひとまとまりになっていた家族がバラバラになっていることが珍しくありません。

 また、相続争いは、争いの渦中に巻き込まれた当事者の心身に激しいストレスをもたらすことが往々にしてあります。

 私のクライアントの中にも、子どもたちが相続争いを繰り広げるのに胸を痛めて、心労で倒れた方がいます。

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