税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 そもそも、一昔前であれば、「遺留分」などという言葉そのものを口に出す人がほとんどいませんでした。

 また、長兄だけが相続することに不満があったとしても、面と向かって言うようなことはなく、せいぜい私のような顧問税理士を相手に愚痴をもらすという程度のものでした。

 それが今は、遺産分割協議の話し合いの場で、いきなり、相続人の配偶者の一人が、「こちらの要求についてお話ししてよろしいでしょうか。私どもには3億円をもらう権利があるはずです」と切り口上で伝えてくるというケースがあるくらいです。

 相続人ですらない者が遺産分割について口を挟んでくるということも昔はありえないことでした。

 相続人の中には、自分の思い通りにならないことに腹を据えかねて、憤激の余り、私に対して罵倒の言葉を投げかけるような人もいます。

 ある相続案件で、遺言執行人を務めたときのやりとりです。相続人の一人で、家を継いだ長兄の妹さんが、遺言書を前にして、「こんな遺言書は認めません! 私はもっともらえるはずです! 裁判を起こしますからね! 絶対に遺産分割協議書にはハンコを押しません!」と阿修羅のような形相で叫び出しました。

 その遺言書の内容は、妹さんの遺留分を侵害はしていませんでした。そのため、訴訟を起こしても、訴えが認められないことは明らかでした。また、公正証書遺言があれば、遺産分割協議書にハンコは必要ありません。

 私が、その旨を伝えると、「日本の法律は間違っている!」と言いながら、私を激しくなじり始めたのです。

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