税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 最後に、私自身が近年、地主の方々から相続対策の相談を受ける中で、個人的に強く感じていることについて触れておきましょう。

 これから同じような立場で、相続の問題に直面しようとしている方々にとっては、おそらく一つの参考になるはずです。

 はじめに指摘しておくと、地主の間で、「争続」の件数は確実に増えています。

 かつては、遺産分割がスムーズにまとまらず、もめるようなケースは数年に1回あるかないかという程度でした。

 それが近年は、そうした例が、年に2、3件は起こっています。しかも、「もう、これ以上厄介なケースに出会うことはないだろう」と思っていたら、その次の年には、それを軽々と上回るレベルの壮絶な相続争いを目の当たりにするような有様です。

 ことに都市農家においては、そうしたケースが目立ちます。

 そもそも、農家では、代々、家業を継ぐ者が、本家の家や農地をはじめとした相続財産のほとんどを継ぐのが常識でした。

 つまりは、家長が亡くなったときには、長兄だけが家の財産を相続し、他の兄弟姉妹は、いわゆるハンコ代として200万〜300万円を受け取って、それ以上は何も求めないのが当たり前だったのです。

 兄弟姉妹の中には、親の生前に家を建ててもらっているなど、実質的には相続財産の一部を前払いで受け取っている者もいましたが、そのことを考慮しても、長兄以外で、法定相続分に相当する財産を100%得ていた者はほとんどいなかったはずです。

 このような習慣を支え続けてきたのが、日本人特有の“奥ゆかしさ”という美徳だったのかもしれません。

 しかし、今や、そのような美徳は失われたようです。「もらえるものはもらう」「主張することは主張する」という、いわばアメリカナイズされた風潮が、都市農家の間にも広まっています。

 ちまたには相続絡みの解説書があふれ、またテレビでも法律を扱った番組が人気を集めています。そのような書籍や番組から、「遺留分」などの知識を得て、「自分には、最低でも相続財産の何分の1をもらう権利がある!」と主張するような人が、ここ10年ぐらいで非常に増えています。

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