なぜならば、国税庁が発表している相続税の調査事績において、税務調査による申告漏れ財産全体のうち、現金預金及び有価証券の申告漏れは、実に約半分を占めているのです。このうち悪質な仮装隠蔽を除けば、残りの大多数は、名義預金及び名義有価証券の脱漏であると思われます。
税務署は、被相続人や家族分の入出金データを各金融機関から容易に手に入れることができます。申告する側の税理士がこの作業を怠ると、簡単に修正申告をすることとなってしまいます。逆に税務署からみると、このレベルでの修正申告は、労せずして結果が出るので、「おいしい調査」といえます。
そこで、お金の流れをチェックし、不審に思う点を書面添付書面にピックアップし、あわせてその原因を書くことで、税務署の疑念は解消されるのです。
また、広大地評価の採用経緯を書面添付書面に書くことも、とても重要です。さきほどお話したとおり、広大地評価の適用については諸々の理論武装が必要であり、その旨を書面添付書面に書くことが、広大地評価の是非を確定させるといっても過言ではありません。もっとも、広大地評価の適用が五分五分のような場合には、書面添付書面に加えて、測量士が作成したその地域の開発要網に準拠した土地開発図面を添付し、さらに不動産鑑定士の意見書を添付することもあります。
ここでは主だった二つについて説明しましたが、その他税務署が聞きたいだろうなということを書面添付書面に書くようにします。
実際にどのような内容の書面を添付するのか、イメージがわかない人も多いでしょう。参考までに、東京国税局資産課税課が作成したサンプルの一部を図表3-11にあげました。詳細は、東京税理士会のホームページで確認が可能です。
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