税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 配偶者への贈与に関しては、先に触れたように、配偶者控除の特例という特別な優遇措置が用意されています。

 これは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産もしくは居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除の他に2000万円までの控除を認めるという特例です。

 これを利用すれば、配偶者は、配偶者控除が適用される範囲内で贈与を受けた不動産または不動産購入の資金については、相続税はもちろん贈与税も支払わずにすむことになるわけです(ただし、申告は必要)。

 配偶者控除は、すぐに相続税対策をしなければならないという緊急の場合にも、効果的に使えます。

 たとえば、夫の死期が近づいているようなケースで、妻に対して「居住用不動産の購入に使うように」と2000万円を贈与すれば、その2000万円に対しては税金がかかりません。基礎控除の110万円と合わせれば2110万円の節税を一瞬にして行えるのです。

 また、通常は、それまでともに住んでいた夫名義の土地、建物が妻に贈与されることになります。

 このようなケースで配偶者控除を受けるのであれば、贈与契約書を作り、さらに法務局で確定日付を得ておくことをお勧めします。

 たとえば、5月27日に不動産の贈与が行われ、6月27日に夫が亡くなったとします。このように贈与から間もない日数で配偶者が死亡したような場合、贈与契約書に確定日付がないと、税務署側に、「夫が亡くなった後に慌てて生前に贈与が行われたように装ったのではないか」と疑われるおそれがあります。

 しかし、契約書に確定日付があれば5月27日に贈与契約がなされたことを証明することができるので、そのような疑いを持たれずにすみます。

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