相続税については、その対応を困難に感じさせる制度的な問題も存在しています。
まず、相続税の申告と納付は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。
つまり、相続税のタイムリミットは、被相続人が亡くなってからわずか10ヶ月間しかないのです。
通常、相続に関する家族間・親族間の話し合いは、四十九日法要以降に始めることが多いでしょうから、その日数を差し引けば、実質的に申告・納付期間は8ヶ月余りしかありません。
このようなわすかな期間で、納税資金を工面しなければならないことを、まずはしっかりと認識しておかなければなりません。
一括で納付できるだけの現預金があればともかく、そうでないとしたら、納税資金を確保するために相続した土地の一部を売らなければならなくなるかもしれません。
しかし、農地の場合、宅地のようにただ右から左へと売るわけには行きません。その前に、農地法等で定められた様々な手続きをふむ必要があります。そのために費やされる時間も考慮しなければなりません。
たとえば、生産緑地を処分するのであれば、その解除のために最低3ヶ月間はかかります。
さらに、宅地造成等の開発行為を予定しているのであれば、都市計画法上の許認可のために、2,3ヶ月は必要となります。
これだけで、相続発生から半年が過ぎてしまうのです。そこから、のんびりと買い主を探し始めたりなどしたら、たとえ売却することに成功し、納税資金を確保できたとしても、とっくに納税の期限がすぎているかもしれません。
しかも、以上のような売却までの流れは、あくまでも遺産分割協議がすんなりと進んだ場合の話です。もし、相続人間で、相続財産の分割方法について話し合いがまとまらなければ、不動産を処分することなどできません。
「遺産分割協議がまとまらず、気づいたら10ヶ月間が過ぎていた・・・」というようなことは十分にありえますし、実際、珍しいことではありません。
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