この「家族信託」を使った相続対策は、結果として遺言書と同等の効果をもたらすといわれていますが、さらに、それにプラスした効果を期待できます。
まずは、信託そのものの基本的な仕組みから説明しておきましょう。
信託は、契約等に基づいて、特定の者が、一定の目的にしたがって、財産を有する者から所有権を移転された財産の管理・処分等の必要な行為を長期的に行うことです。
このような信託の対象となる財産を信託財産、信託財産の所有権を移転した者を委託者、信託財産の移転を受けた者を受託者、信託の仕組みによって利益を受ける者を受益者といいます(図表3−4参照)。
「家族信託」とは、このような信託のスキームを家族間の財産管理や相続等に用いるものです。
具体的な活用例としては、まず、被相続人が認知症等になった場合に相続対策をスムーズに行うため、被相続人の不動産等を信託する利用法が考えられます。
たとえば、父親が、事故の収益不動産を長男に信託します。その結果、父親は委託者であると同時に、賃料を受け取る受益者となります。一方、長男は受託者となるわけです。
このような仕組みを作っておけば、仮に父親が認知症となり成年後見を申し立てられたとしても、長男がすでに不動産の管理処分権を持っているので、不動産の有効活用等を図れなくなるおそれはありません。
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