税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 相続対策として養子縁組を行う場合には、養子が実子ともめる可能性があることも想定しておく必要があるでしょう。

 たとえば、Aが自分の子どもBの子ども(Aからすれば孫)であるCを養子にした場合、BとCはともにAの子どもになって、同一順位でAの相続財産を相続することになります。このようなケースで、BがCの母親であるような場合、Cに全ての財産を相続させてしまうことがあります(図表3−3)。

図表 3-3

 しかし、これは非常に危険です。

 私の見聞した例では、このようなパターンで、全ての財産を相続した息子が母親と仲たがいした挙げ句、母親を無理やり、家から追い出してしまったというケースがありました。その母親は、長年生活してきた1000坪ほどの屋敷を離れ、今ではアパートで1人寂しく暮らしています。

 何ともひどい話ですが、母親がわずかなりとも自宅の不動産について持ち分を持っていればこのような事態は避けられたはずでした。

 親心から、「自分は老い先短いし、子どもに財産を全部渡してしまおう」などとつい思ってしまう気持ちもわかりますが、たとえ親子の間であっても何が起こるかわかりません。万が一を考えて、せめてわずかでもいいから自分に持ち分を残しておくことをお勧めします。

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