税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 そもそも、不誠実な建築業者の場合は、顧客の収支など全く気にしてくれません。

 業者が考えているのは、その土地に建つ最大限のものを、つまりは、顧客の資力から最大限の建築費が見込めるものを建てさせようということだけです。

 たとえば、本来であれば、建築後の税金や返済金などを考えれば、2億円ぐらいのイニシャルコストで建てるのが最も理想的な土地であっても、容積率ギリギリのところ(たとえば4億円の建物)まで建てさせようとします。

 このような物件は、もちろん手持ち資金だけでは建てられず、大部分を銀行等からの借り入れでまかないます。

 そうなると、仮に運よく「入り=賃料」がよかったとしても、月々の返済額も大きくなります。

 この返済が、次第に、ボディーブローのようにじわじわときいてくるはずです。

 はじめは満室でも、月日がたてば、空室率も上がってくるかもしれません。そうなれば、毎月の賃料で銀行に借りたお金を返済していくというプランが破綻することになります。

 実際、気づいたときには当初の計画では回らなくなっていて、「返済のために家の裏にある農地を売らなければならなくなっていた」などということは珍しくありません。第1章で触れたようにバブル期に建てられたマンション、アパートについてはそのような例が散見できます。

 業者は、「とりあえず一軒だけでも建ててください」と嘆願してくるでしょう。

 しかし、収益性のない物件は、建ててしまえばもうそれだけでおしまいです。そして、目的を達成した業者は、後は野となれ山となれ、二度と足を運んでくることはありません。

 建てる前までは、あれほど熱心に、毎日のように、うやうやしげな笑みを浮かべてやってきていたのに・・・。

 また、業者の中には、「ひと月◯万円の賃料収入を30年間保証します」と家賃保証を誇大にアピールする者もいます。「それなら確実に家賃が入ってくるから、安心だ」と思うかもしれません。

 しかし、契約書をよくみてみましょう。

 ほとんどの場合、小さな文字で目立たないように、「2年ごとに賃料を改定します」「極端な経済的事情の変更によって賃料を見直します」などというように、当初の家賃保証の約束を反故にする内容の条項が記されています。

 実際、何十年間も同じ賃料で家賃を保証してくれることばかりに目が行き、契約書をろくろく確認せずに契約してしまう人は少なくありません。

 しかし、空室が増えれば、業者側は家賃保証の負担に耐えられなくなります。そうなれば、契約書をたてにして、一方的に保証している賃料の額を下げるよう求めてくるのです。

 それに応じないのであれば、家賃保証の契約を解除されるかもしれません。「家賃保証があるから建てたのに!」と抗議しても後の祭りです。

 すでに家賃保証のマンション、アパートをお持ちの方は、たまにはその物件の入居状況を確認してください。空室が思ったよりも多い場合には、家賃保証の契約の解除という話が来る前に、その建設業者(管理会社)に対応策を練るように申し出てください。

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