税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 同市では、ちょうど私が生まれた昭和39年に市制が始まりました。当時6万数千人だった市の人口は、現在2倍以上にまで膨らんでいます。

 次第に、人口が増加していき、同市がベッドタウン化していった経緯について、市が作成した資料の中では次のように述べられています。

「本市は・・(略)・・昭和30年代から公団住宅や都営住宅など大規模な集合住宅団地の建設により急激な都市化が進行し、昭和30年(1955)の人口2万3090人は、昭和39年(1964)には約3倍の6万6012人に達し、東京都で13番目の市となりました。昭和40年代には戸建ての持家を中心とした家族世帯の転入が進み、昭和50年(1975)には市となった昭和39年(1964)の1.7倍の10万9213人となり、その後も人口増加は続いています」(「東村山市の農業の現状と課題」より)

 東村山市がこのように順調に人口を拡大していき、ベッドタウン化していった背景としては、先に述べたように新宿まで電車で30分の好立地だったことや、行政が都営住宅の誘致に熱心だったことなどがあげられます(現在、主な地方道路としては、東京所沢線、新宿青梅線、府中所沢線、浦和東村山線が、鉄道路線としてはJR、西武鉄道が通っており、鉄道駅が9駅あります)。

東村山市の人口の推移

 このような都市近郊の農村地域におけるベッドタウン化現象は、多少の違いはあるでしょうが、全国各地の主要都市の近辺でも現れています。

 たとえば、農林水産省の発行している広報誌「aff(あふ)」の2013年5月号では、「いいね!都市農業」と題して都市部の農業について特集しています。その中では、農業が行われているベッドタウンの例として、東京都立川市、愛知県名古屋市港区、大阪府寝屋川市などがとりあげられています。

 ベッドタウン化によって駅前は開発され、かつては広大な畑が広がっていたような場所には、次々と一戸建て住宅やマンション、アパートが建てられていったのです。

 こうした都市化の流れの中で、ひなびた農村地帯然とした地域の趣は大きく変貌していきました。

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