税理士 土田士朗
税理士 土田士朗
 インターネットで簡単に物件情報を収集できるようになったことなどもあり、借り手の要求水準や交渉能力はかつてに比べてはるかに高まっています。

 たとえば、空室ができたため、新たに入居者を募集したが、なかなか見つからないようなときには、やむをえず家賃を下げることを余儀なくされます。

 すると、同じ条件の部屋であるのにもかかわらず、「あっ、家賃が5万円になっている。自分は5万8000円払っているのに」と気づいた入居者も、オーナーに対して家賃を下げるよう迫ってきます。

 さらに、昭和40年、50年代に建てられたようなマンション、アパートであれば、そろそろ建て替えの時期を迎えようとしています。

 言うまでもないことですが、建て替えには多額の費用が必要となります。しかし、お金と手間をかけて建て替えたとしても、ここまで述べてきたような理由から推測がつくように、入居者が確実に入るという保証はありません。

 それでも、マンション、アパートを建てるのか、それとも別の形で不動産の有効活用を図るのか、難しい判断を迫られることになります。

 このように、地主の方々が、不動産経営で生活を維持していく、もしくは相続税の資金を確保していこうとするのであれば、相当な覚悟と並々ならぬ努力が必要となるでしょう。

 もしかしたら、中には、「うちは駅から歩いて5分の場所に土地がある。駅チカなら大丈夫だろう」と思っている人もいるかもしれませんが、それは甘い考えです。

 たとえば、東村山市を例にすれば、市内には9つの駅がありますが、その中で駅の近くにあればまず問題ないといえるのは3駅だけです。

 某駅などは、駅から数分圏内のマンションでも空室が目立ちます。家賃を下げても、状況は全く変わりません。

 もしかしたら、近くに大きな大学あるいは会社、工場がないことや路線の利便性が今一つであることなどがネックとなっているのかもしれません。

 ちなみにこの駅がある路線は、最近、アメリカの投資グループ、サーベラスが、赤字を理由として、西武鉄道に廃線を迫ったことで話題になりました。

 このような駅チカでありながら、十分な収益を上げることができない土地を抱えて悩んでいる土地オーナーは決して少なくないのです。

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