土田 士明
土田 士明
 相続税の税務調査において申告漏れの金額がいちばん高いのは何でしょうか。国税庁が発表した平成23年度統計では、土地が630億円とやはり高額ではありますが、実は申告漏れ相続財産の金額の内訳は、現金・預貯金等が1,426億円で最も多く、続いて有価証券631億円、土地630億円の順となっており、現金・預貯金等の構成比は36.2%もあるのです。もちろんマルサの女のように現金や金の延べ棒を庭に埋めていたなんてケースもあるでしょうが、まず気をつけたいのが「名義預金」です。

 親が子どものために、子ども名義で作成した通帳にせっせと預金しておき、結婚する時にまとめて渡そうなんて考えますよね。毎年110万円の基礎控除額以下だから贈与税はかからないはず。しかしこれでは名義預金として、親の相続の際に相続財産であるとの指摘を受けることになります。

 そもそも贈与とはどのようなものでしょうか?贈与の規定は民法第549条によります。

「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」つまり、贈与者(財産をあげる側)による「これをあげますよ」という贈与の意思表示と、受贈者(財産をもらう側)の「いただきます」という受贈の意思表示の両方があってはじめて贈与契約が成立するのです。ということは先の預金は、もらう側の意思表示が無いので贈与自体が成立しないのです。子どもの名義を借りて、親の預金をしているだけです。これを名義預金といって親の相続財産に計上することになります。

 では、名義預金との指摘を受けないためにはどうしたら良いでしょうか?

 それには贈与の事実を客観的に明らかにしておく必要があります。キーワードは「支配」、「運用」、「管理」です。その預金の支配、運用、管理は誰がしているのか?ということを誰の目で見ても、子ども側にあることを立証できるようにしておくのです。

 まず、子どもが成人の場合は、子どもが持っている預金口座に親が振り込みましょう。子どもに内緒という訳にはいきません。通帳、印鑑、キャッシュカードは子どもが管理し、いつでも自由に使える状況が必要です。

 子どもが未成年の場合は、預金は成人になるまで親権者が管理するのが当然ですので、親が管理しますが、出金する際は子どもの学費の支払いなど、子どものための出金であることが必要です。もちろん、年間の基礎控除額を上回る贈与の場合は、贈与税の申告をお忘れなく。

尚、平成25年税制改正大綱では「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が盛り込まれ、平成25年4月1日から平成27年12月31日まで、受贈者1人につき1,500万円まで贈与税の非課税となる見込みです。金融機関等に信託しないといけませんが、上手に活用したいですね。