マイナンバーのお話をするには、自分自身の個人のマイナンバーを扱う立場と、経営者(事業主)としてマイナンバーを扱う立場の2つの立場をしっかりと押さえなければなりません。
1.個人としての立場をしっかりサポート
①個人番号カードは必要?
また、送られてきた封筒の中に「個人番号カード交付申請のお知らせ」という総務省のパンフレットが入っていたために、多くの方々がこの「個人番号カード」を作成しなければいけないと思い込んでおられます。しかしながら、このカードの申請は任意ですし、作成しても今のところはあまりメリットがないのでお勧めはしません。
免許証やパスポートなどの顔写真付き証明書がない方や、話題作りのため作成したい方は、パンフレットに書いてある注意事項をよく読み、「個人番号カード」を作成して下さい。
作成段階において、顔写真を撮影する必要があるのですが、この顔写真が不適当で不受理とされるケースが多発していますので注意が必要です。
ちなみに、下記のものは不受理とされます。
・顔が横向きのもの
・無背景でないもの
・正常時の顔貌と著しく異なるもの
・背景に影のあるもの
・ピンボケや手振れにより不鮮明なもの
・帽子、サングラスをかけ人物を特定できないもの
なかでも不受理の中で、最も多いのは、笑い過ぎているものだそうです。少しぐらいなら許されるようですが、スナップ写真のような笑顔は、はじかれてしまうようです。
大多数の方は、「個人番号カード」は作成しないと思いますので、「通知カード」は、できれば鍵のかかる金庫などに大事に保管して下さい。
②マイナンバー制度の誤解
これは2つの立場に共通していえることですが、一番多い誤解は、個人情報の管理方法です。日本のマイナンバー制度は、先行してこの制度を導入したアメリカや韓国などの、情報を「一元管理」する方法と違い、必要な情報を必要な時に照会、提供する「分散管理」する方法を採用しています。
(図:出展・内閣官房)
それゆえ、万が一「個人番号」が人に知られることとなったとしても、直ちに個人情報が野放図に流出する可能性はありません。
③マイナンバー制度によって出来ること
・所得把握の精度の向上
従来、住所・氏名により所得情報を収集していたため、転居、結婚等による変更を把握しきれず、正確な情報集約が困難な場合がありました。マイナンバー制度によって所得情報を効率的に把握出来ることから、所得の過少申告や不正還付等の抑止力が大きく向上します。また、生活保護の受給者の収入に関する情報の把握が容易になりますので、不正受給の抑制についてかなりの効果が期待されます。
・行政事務の効率化による国民の負担軽減
社会保障の給付を受ける場合、市役所・税務署・会社から住民票・所得証明書・納税証明書・源泉徴収票等を取得し、申請書に添付する必要がありました。マイナンバー制度によって、これらの書類が不要となり、添付書類の入手に係るコスト及び時間の削減となります。また、行政機関側での事務コスト及び事務時間の削減にもなります。
・国民の利便性の向上
平成29年1月以降「マイナ・ポータル」というインターネットサービスが開始される予定です。「マイナ・ポータル」では、自分の特定個人情報が、いつ、どの行政機関からどの行政機関に、何の目的で提供されたのか確認することが出来ます。
また、転居等の際に「マイナ・ポータル」から自治体に転入届等を提出すると、健康保険や年金等の複数の変更手続きが自動的に一括処理出来るなど、事務手続きが簡素化される予定です。確定申告の際には、自己の収入や社会保険料、医療費等の金額を確認することが出来るため添付書類を省略出来る等、利便性が向上します。
④マイナンバーの利用範囲拡大
現行法令ではマイナンバーは「税・社会保障・災害対策」にその利用が限定されていますが、今後は、①預金口座へのマイナンバーの付番 ②医療分野における利用範囲の拡充 ③地方公共団体の要望を踏まえた利用範囲の拡充(公営住宅・雇用・障害者福祉)等、マイナンバーによる情報連携により更なる効率化・利便性の向上のため、利用範囲の拡大が検討されています。
2.経営者(事業主)としての立場をしっかりサポート
①従業員のマイナンバーの取り扱いはどうする?
経営者(事業主)は、従業員から取得したマイナンバーを、源泉徴収票や健康保険・厚生年金、雇用保険関係の届出書などに記載して、行政機関に提出することになります。
そのためには、従業員の方々に向けて社会保障・税番号(マイナンバー)制度についてきちんと説明しなければなりません。そのための説明資料や、経営者(事業主)がマイナンバーを慎重に取り扱うことについての同意書、さらにはマイナンバー関連の修正が必要となる「就業規則」などの諸規則の改訂についても、しっかりサポートします。
②経営者(事業主)がマイナンバーを取り扱う担当者に伝えなければならないこと
マイナンバーは、法令で定められた利用目的以外で取得・利用・他者への提供をすることは固く禁じられています。同じく、利用目的以外での保管も禁じられていますので、業務で利用する必要がなくなったら破棄しなければなりません。
また、マイナンバーの漏えい防止のため、「安全管理措置」が必要となります。最低限の準備としては、下記のことを行ってください。
・マイナンバーの取り扱いに関する従業員教育
・マイナンバーの取り扱いルールの決定
・マイナンバーを取り扱う人の限定
・外部からの不正アクセス防止
・パソコンの設置場所の工夫(のぞき見防止)
従業員が100人超の会社については、さらに厳しい「安全管理措置」が義務づけられていますので、ご注意下さい。
③実際に経営者(事業主)がやらなければならないこと
従業員のマイナンバーを収集する際、会社としては、
・利用目的を説明した上で
・マイナンバーが記載された「扶養控除等申告書」などの提出を受け
・本人確認を行う
必要があります。
既に雇用関係にある従業員は、通常採用時に身元を確認済みであると考えられます。このため、通知カード等による番号確認のみ行い、身元確認を省略することも認められます。ただし、新規に従業員を採用した場合には、現に雇用している従業員とは異なり、「番号確認」と「身元確認」の両方が必要です。
通常の場合、「身元確認」は運転免許証やパスポートなどの顔写真付きの身分証明書で行いますが、顔写真付きの身分証明書を持っていない従業員については、保険証や年金手帳、税や公共料金の納税証明書・領収書などの書類を2つ以上提示してもらうことで、身元確認を行います。
また、当たり前ではありますが、従業員の扶養親族の本人確認は従業員自身が行いますので、安心して下さい。
経営者(事業主)の負担がかなり増えることになりますが、経営者(事業主)がやらなければならない業務についても、しっかりとサポートします。